飲食店厨房電気工事の費用相場|配線設計と業者選び
飲食店の開業準備が進み、内装業者との打ち合わせが本格化する段階で、多くの経営者が悩まれるのが厨房の電気工事です。「相場はいくらなのか」「見積もりに何が含まれているのか」「後から追加費用が発生しないか」といった不安を、これまでお客様からよくいただきます。厨房は高熱量機器・給排水・ガス配管が密集する特殊エリアで、電気設計の判断が開業後の運用効率を大きく左右します。本記事では東京エリアでの施工経験をもとに、費用相場・配線設計・失敗回避のポイントを整理しました。
飲食店厨房電気工事の費用相場と内訳
飲食店厨房電気工事の相場は東京エリアで概ね150〜300万円で、業種別・機器種別に10〜50万円単位で変動します。
厨房電気工事の費用は、業種や機器構成によって大きく変わります。現場を見てきた経験から言えるのは、同じ「飲食店」でも、ラーメン店と小規模カフェでは電気容量も配線本数も倍以上違うということです。単純にテナントの坪数だけで費用を推測すると、実際の見積もりとの差に驚かれるケースがよくあります。
費用は大きく「基本工事費」「機器接続費」「配線費」の三層構造で組み立てられており、それぞれの内訳を理解しておくと、業者との打ち合わせもスムーズに進みやすくなります。以下は業種別のおおまかな相場感です。
| 厨房タイプ | 機器数の目安 | 費用相場(東京) |
|---|---|---|
| ラーメン店 | 8〜12台 | 200〜280万円 |
| 和食・居酒屋 | 10〜15台 | 220〜300万円 |
| カフェ・軽食 | 5〜8台 | 150〜200万円 |
| 洋食・レストラン | 12〜18台 | 250〜320万円 |
基本工事費と機器別接続費の分け方
基本工事費とは、分電盤から厨房エリアまでの主配線工事を指します。この段階でどれだけの電気容量を確保するかで、後々の機器追加への対応力が決まってきます。IHクッキングヒーター・食器洗浄機・フライヤー・製氷機など、機器ごとに単独回路(専用配線)が必要となるものが多く、機器数だけ接続費が積み上がります。特に200V機器は配線断面積や遮断器容量が異なるため、100V機器よりも1回路あたりの費用が高くなる傾向です。
見積もりで見落としやすい追加費用
実際の現場でよく発生するのが、テナント特有の追加費用です。既設配管を避けるための迂回工事、床下配線用のスラブ穴あけ、天井裏のダクトとの干渉回避、隣接テナントへのスルー工事など、テナントの構造状況によって概ね10〜50万円の上乗せが発生するケースがあります。設計段階でこれらの可能性を洗い出しておくことが、後の追加見積もりを避けるコツです。厨房工事の実例については、業務内容・施工事例はこちらもご覧ください。お見積もりについては現地確認のうえご説明しますので、お問い合わせはこちらからご相談ください。
厨房の工法・配線方式の種類と選択ポイント
厨房配線は露出・隠蔽・床下・天井の4工法があり、工事費・工期・テナント構造で選択基準が異なります。
配線方式の選定は、コストだけでなく店舗デザインやメンテナンス性にも直結する判断です。オープンキッチンで客席から厨房が見える構造では、露出配線のケーブルラックが目立ってしまい、店舗イメージを損ねることもあります。一方、隠蔽配線を選ぶと美観は保たれるものの、将来の機器レイアウト変更時に壁を壊す必要が出るなど、運用面でのトレードオフが発生します。
専門的な観点から重要なのは、テナントの躯体構造(RC造・鉄骨造・木造)や既設配管の位置を事前に把握したうえで、費用・工期・美観のバランスを取ることです。
| 配線方式 | 工事費の目安 | 工期の目安 |
|---|---|---|
| 露出配線(ラック式) | 60〜80万円 | 5〜7日 |
| 隠蔽配線(壁内埋込) | 100〜140万円 | 10〜14日 |
| 床下配線 | 120〜160万円 | 12〜16日 |
| 天井ルート配線 | 80〜110万円 | 7〜10日 |
露出配線(ラック・ダクト)の選択基準と実例
露出配線は最も一般的で、工期・コストの両面で優位性があります。天井部分にケーブルラックを設置して主配線を走らせ、そこから各機器へ分岐させる方式です。メンテナンス性が高く、機器追加や配線変更にも柔軟に対応できるのが強みで、バックヤード型の厨房やクローズドキッチンでは第一候補になります。ただしオープンキッチン構造の場合は、客席側からラックが見えないよう、天井仕上げとの取り合いを設計段階で検討する必要があります。
隠蔽配線・床下配線が必要なケース
隠蔽配線は、モダンで洗練された内装デザインを重視する店舗や、天井高が確保できず露出配線でごちゃつく印象になる場合に選ばれます。床下配線は、島型の調理台やアイランドキッチンで、機器から床への配線立ち上げが必要な際に採用されるケースが多い方式です。いずれも工事費が露出配線の1.5〜2倍程度になり、工期も延びます。将来の機器増設・移設を考えると、隠蔽部分に予備配管(空配管)を仕込んでおくと後の改修コストを抑えられます。業務内容・施工事例はこちらから、実際の工法選択事例もご確認いただけます。
見積もりの読み方と費用抑制のチェックポイント
厨房電気工事の見積もりは三層分離を確認し、スルー工事の有無・配線長・機器ランク調整で概ね10〜30万円削減できる可能性があります。
見積書を受け取ったとき、金額の総額だけを見て他社と比較してしまうと、実は工事内容が大きく異なっていたということが起こりがちです。とはいえ、電気工事の見積書は専門用語が多く、初めて見る方には判読が難しい面もあります。ここでは、経営者が最低限チェックすべき見積もりの読み方をまとめます。
見積もり項目の標準的な分け方
適切に作成された見積書は、分電盤工事・主配線工事・分岐配線工事・コンセント設置・照明工事・各機器専用配線が、それぞれ独立した明細行として金額を持っています。この構成であれば、どの部分にどれだけの費用が掛かっているかが把握できます。逆に「厨房電気工事一式 250万円」といった一括計上の見積もりは、内訳確認が困難で、後々の交渉や変更対応が難しくなります。現場で実際によく見るパターンとして、一式表示の見積もりを受け取った経営者が、内訳の説明を求めても具体的な回答が得られず不安になるケースがあります。項目分離された見積書を出してくれる業者を選ぶことが、透明性のある工事契約への第一歩です。
複数業者の見積比較時の落とし穴
A社が180万円、B社が220万円という見積もりを比較した場合、単純に安いA社を選ぶのは早計です。よくあるのは、A社の見積もりにはスルー工事や配管迂回工事が含まれておらず、着工後に「これは追加工事です」と請求が発生するパターンです。一方でB社は最初から想定される追加工事を含めた総額を提示しているため、実質同額に収まることもあります。項目ごとに「基本工事に何が含まれ、何が別途か」を確認し、同じ条件で比較することが重要です。特にスルー工事の有無、配線長の想定距離、コンセント数、機器ランク(業務用の等級)は必ず確認しましょう。
厨房コンセント・機器配置設計の5つの失敗パターン
厨房のコンセント配置失敗は位置・数・高さ・防水・拡張性の5要素で発生し、竣工後の改修は概ね50〜100万円の追加費用になります。
設計段階の小さな見落としが、開業後に大きな運用ストレスと追加費用を生む典型例が、厨房のコンセント配置です。現場を見てきた経験から、竣工後に「もっと考えて配置すればよかった」というご相談を数多くいただきます。以下、代表的な失敗パターンをまとめました。
| 失敗パターン | 原因 | 防止ポイント |
|---|---|---|
| コンセントが機器に隠れ使用不可 | 機器実寸を確認せず設計 | 機器メーカー図面で位置確認 |
| 数不足で延長コード常用 | 将来の機器追加を未考慮 | 想定機器+2〜3口の余裕確保 |
| 高さ不適切で配線が邪魔 | 機器接続口の位置未確認 | 機器タイプ別に高さ設計 |
| 防水・防油対策不足で漏電 | スプラッシュ環境を軽視 | 防水コンセント・防油パネル採用 |
高さ・位置の設定ミスと補正工事の実例
IHクッキングヒーターは背面下部に接続口が集中し、フライヤーやガスコンロは側面接続、食器洗浄機は下部背面など、機器ごとに接続位置が異なります。この情報を機器メーカーの図面から確認せずにコンセントを配置すると、実際に機器を設置した際に「コンセントが機器の裏に完全に隠れて抜き差しできない」「配線が調理動線を横切る」といった問題が発生します。これまで対応したお客様の中で、竣工後にコンセント位置を変更する補正工事を実施したケースでは、壁面補修と配線引き直しで概ね30〜80万円の追加費用が発生した例もあります。設計段階で機器メーカーの図面を必ず入手し、実装位置を明記することが防止の基本です。
防水・防油対策を見落とした後の対応
厨房内は水はねや油はねが日常的に発生するスプラッシュ環境です。特にシンク周辺や揚げ物調理エリアのコンセントは、防水・防油仕様のカバー付きコンセントを採用し、周辺には防油パネルの設置が推奨されます。竣工後にこの対策不足に気づいた場合、既存内装を一部撤去してのパネル設置となり、見た目の仕上がりも新設時より劣る結果になりがちです。営業を継続しながらの改修は、休業日程の調整も必要で、経営面での負担も大きくなります。
開業前に確認すべき厨房電気工事のチェック項目と竣工検査
厨房電気工事の竣工検査は容量・接地・絶縁試験など主要項目を確認し、不具合は開業前に補正することが重要です。
開業日が迫る中で、電気工事の竣工検査を「業者任せ」にしてしまう経営者も少なくありません。しかし竣工検査は、開業後のトラブルを未然に防ぐ最後の機会でもあります。プロの目で見た場合、経営者自身が立ち会って項目ごとに確認することで、初期不具合の発見率が大きく変わります。
開業直前の電気・ガス・給排水検査との時系列
厨房工事では電気・ガス・給排水の三工事が並行して進み、それぞれ別の業者が担当することが一般的です。電気の竣工検査は他工事の終盤段階で実施され、配管貫通部や機器周辺のスペース確保を並行して確認する必要があります。開業1ヶ月前の時点で、各工事の完了予定日と検査日程を工程表で確定させておくことが、スケジュール遅延を防ぐ鍵です。特に検査で不具合が発見された場合、手直し工事に1〜4週間を要するケースもあり、開業日を延期せざるを得ない事態にもつながります。
竣工後のトラブル対応と保証内容の確認
竣工検査に合格しても、実際の営業を開始してから初期不具合が判明することがあります。多くは営業前のテスト稼働で1〜2週間の間に検出されますが、営業本格化後にブレーカーが頻繁に落ちる、特定機器の電圧が不安定になるといった症状が現れることもあります。工事契約の保証期間・保証内容・対応可能な範囲を、竣工時に書面で確認しておくことが重要です。保証書には、対応時間帯や緊急時の連絡先、無償対応となる範囲を明記してもらうよう業者に依頼しましょう。開業前の詳細なご相談は、お問い合わせはこちらからお気軽にご連絡ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 見積もり後に機器の数や種類が変わったら追加費用は?
高出力機器への変更は配線断面積アップで概ね30〜50万円、機器の設置位置移動は配線経路変更で10〜30万円が目安です。事前通知いただければ対応計画を立てやすいため、変更が想定される時点で早めのご相談をおすすめします。
Q. テナント工事中に電気工事だけ先行できますか?
壁・床工事の竣工後に厨房電気工事を開始するのが標準的です。先行実施は配管回避工事が増えて概ね10〜20万円のコスト増となる場合があります。工程全体の把握で調整可能ですので、施工者にご相談ください。
Q. 開業後に厨房機器を追加する場合、既設配線で対応可能?
分電盤の容量・回路残余次第です。既設配線流用は新規配線より概ね20〜30万円低コストですが、容量不足の場合は分電盤拡張で50〜70万円程度の工事が必要です。開業設計時の余裕確保が重要です。
この記事を書いた理由
著者 – 株式会社N・bright
飲食店開業を検討されるお客様からは、厨房の電気容量不足・コンセント位置の後悔・テナント工事との調整ミスといった、設計段階での判断が後々の運用に大きく影響するご相談をよくお受けしています。開業後に気づいても改修は容易ではありません。
この記事が、これから飲食店の開業準備を進められる皆様にとって、費用と設計の判断材料としてお役に立てれば幸いです。安心して長く営業できる厨房づくりを一緒に考えていければと思います。
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